「本当に大事なことのために人の時間と労力を使う」

お金で考えると本質を見失う

国家経営の根本的な過ちで説明した通り、私たちの最大の問題は、何でもお金で考え過ぎることです。お金などハッキリ言ってどうでも良いのです。大事なのは今生きている人の時間と労力、そして地球の資源です。これらは全て、浪費してしまえば二度と戻りません。一方、お金は決して失われることなく、ただ社会を回るだけです。例えば一億円で穴を掘って埋めるだけの穴掘り事業があったとして、それが無駄なのは一億円だからではありません。一億円だろうが十億円だろうが、お金はただ右から左に流れるだけです。しかし、そこで浪費される人々の時間や労力、資源は永遠に失われてしまいます。それが無駄の本質です。金額ではありません。ですから、GDPだけを追い求めても、それが私たちの幸せに繋がるとは限りません。それはあくまでも「お金がいくら回ったか」の指標に過ぎず、「それで何をしたか」は示さないからです。しかし、大事なのはそちらの方です。我々の生活の質、人生の豊かさを決めるのは、一人一人が何のために時間と労力を使い、どんな体験をするか。そして、それが未来の人たちの幸せも左右するのです。ですから国家として最も大事なことは、いかに人々の時間と労力、資源を大事にし、本当に意味のあることに使ってもらうか。そのためには大きな方向性を明確にし、それらを無駄にするような障害を最大限除去すること。それが本来の政治の仕事です。それをすればGDPも増えるでしょうが、それはあくまでも結果に過ぎないのです。

 

人、モノ、情報、お金の流れを自由にする

この社会は言うなれば舞台です。奇跡的に同じ時代に生まれ、交流可能な空間に住んでいる私たちが、それぞれの時間を分け合いながら関わり合う場所です。それを通じてなるべく多くの素晴らしい瞬間や生産物を生み出そうとするなら、そうしやすい環境を整え、阻害する障害を除去することです。より具体的には、空間を使いやすくデザインし(物理的にも制度的にも)、人、モノ、情報、お金の流れを自由にすることです。しかし、今の日本はまるで逆です。土地の収用に時間がかかりすぎ、都市デザインもままなりません。成田などに国際空港を作り、日本人ばかりか世界中からの訪問者の膨大な時間と労力を浪費しています。高速道路に高い料金を課し、人やモノの流れを抑制します。お金を振り込む度に高い手数料と印紙税が課され、実際に価値を生みだす人たちの取り分を奪っています。高い家賃が立地ビジネスを難しくし、人が街で集ったり、一緒に活動する機会を減らしています。全て、目の前のお金、コストに惑わされた考え方のせいです。高速道路を作ったら、そのコストを回収しなければならないというのは一般企業の発想であって、国家の発想ではありません。その時点で、すでにそれを作る人の労力と時間、資源は使われてしまっているのですから、あとはそれをいかに有効利用するかが肝心なのに、そこに料金を課して「使われないこと」を促進するのです。何ともったいないことでしょう。我々は目先のお金に惑わされず、自分たちの活動を抑制する障害を一つ一つ取り除いて行かなければなりません。高速道路など全て無料で良いのです。その他公共交通機関にも一定の補助を与え(特に通学定期は100%公費負担)、銀行振込手数料の無料化も進めます(銀行が抵抗すればATMを国営化、印紙税も当然廃止)。それからこれは最も重要なので別ページで詳しく説明しますが、土地の公有化を進め、人々の生活の質を高める都市デザインを行い、土地を持っていなくても若者がそれを使い、アイデアを実現できる場所を与えること。このようにして、今生きている人々の時間と労力、資源を無駄なく使い、最大限活用できる舞台を整えること、それがそもそも国家の存在意義です。

 

止まっていた時間を未来に動かす

デフレは、単なる金融的側面から議論されることがほとんどですが、実は人々の時間を無駄にする、目に見えない、しかし非常に大きな障害です。何故なら、お金が回らないということは、人々の活動レベルが下がるということであり、今より未来の方が安くなるとなれば、待とうとする心理が働くからです。お金が足りないばかりに、今やりたいことができないケースも多くなるでしょう。しかし、それとは関係なく、時間はどんどん過ぎて行くのです。インフレでもデフレでも、人生の長さは恐らく変わりません。ですから、デフレで人々の活動レベルが下がれば、膨大な人の膨大な時間が無為に過ぎ、それは取り返しがつかないのです。特に子どもたちの時間は貴重です。その時期にしかできないこと、学べないことがたくさんあるからです。その子どもたちの教育費を概ね自己負担にして、受けたい教育を諦めざるを得ない子どもたちがいるなど、国家の怠慢でしかありません。莫大な借金を負わせる奨学金制度もしかりです。ですから、大学までの教育費の全額無料化(少なくとも公立校は全て)などは当たり前、月額5万円程度の育児手当を支給するなど、社会で子どもたちをしっかりと育てる仕組みを作り、大事な子どもたちの時間を最大限、その可能性を伸ばすことに集中させること。そして、政府紙幣の発行のところでも述べたように、まず一人100万円ずつぐらい配り、デフレを脱却すること。そうすれば、多くの人の時間を無駄にして来た目に見えない大きな障害を除去し、止まっていた時間が再び未来に向って動き出します。デフレとは、それほど非人間的な現象であり、単なる金融現象では済まないものないのです。

 

明確な方向性を示し、やるべきことは全てやる

人々の時間と労力を無駄にする障害を最大限除去した上で、個々の人がそれらをどう使うかは、全く個人の判断に委ねるべきです。しかし、国家として最低限やるべきことはあり、それが大多数の人や未来の子どもたちのためになるのであれば、人々の協力の下にそれを成し遂げなければなりません。そして、やはりそこでも、人々の時間と労力、資源を無駄にしないために、明確な方向性を示し、たくさんの人が迷いなくそれに尽力できるようにすることが重要です。幸い、政府紙幣を発行し、税収と国の借金の心配がなくなれば、財源がないからできないということはなくなり、やるべきことを純粋に追求できます。そしてやるべきことは山程あります。まずすべきなのは、エネルギーと食糧の完全自給を目指すことです。この二つを海外に頼ったまま自立は望めませんし、安全保障上の大きなリスクです。採算度外視で農・畜産業と再生可能エネルギー事業の振興を進めるべきです。その結果、私たちが農・畜産物や電気代に高い料金を払うことになっても、そこで払われたお金は全て国内に循環します。原発も勿論、直ちに止めます。これは経済効率やエネルギーの問題ではなく、取り返しのつかないリスクを取る権利など我々にはないからです。それで増える燃料輸入費が年間3兆円と言いますが、日本は366兆円相当の経常黒字があるのですから、今こそそれを使う時です。その間に再生可能エネルギーや循環型社会構築のための研究開発、投資を積極的に行い、そこで得られたノウハウがいずれまた黒字を稼ぐでしょう。その時には燃料輸入費も大幅に減っていますから、短期的な経常収支の心配は要りません。むしろ、「国家経営の根本的な過ち」で説明した通り、短期的には赤字にした方が良いぐらいです。その考えの下、教育費の無料化、育児手当の支給、介護福祉保育事業への投資、補助、老朽化したインフラの整備、震災復興事業など、国内の立て直しを徹底的にやるのです。そのグランドデザインは「世界最先端の自立的循環型社会」を作ること。一刻も早くそれに取りかかれば、内需拡大、黒字の有効利用、国内のお金の循環、デフレの脱却を一気にできるのです。

 

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